変わる驚き、変わらない楽しさ OSC2013 Hokkaido!
10/07
9月14日(土)、札幌コンベンションセンターでOSC2013 Hokkaidoが開催さ
れました。OSC2013レポート班の @niku_name / @myokoym / @puprl が
様子をお伝えします。
OSCの北海道開催は2005年に第1回を正式開催し、今年で9回目を数えました。
今回は以下のように、数、種類共に盛り沢山のイベントとなり、北海道の
秋としては暖かいやや汗ばむような陽気のなか、約600名の来場者があり
ました。
・セミナー数:58(9トラック)
・展示数:63ブース
・ハッカソン:2
・ハンズオン:1
■ブース展示
今年は、過去最多だった昨年を上回る63の企業/団体の展示があり、
OSSへの注目度が年々高まっていると実感しました。
出展者は、大企業、地元企業、全国規模のコミュニティ、地元コミュニティ
から個人まで、バラエティ豊かでした。
書籍、PC、タブレットなどを駆使して活動内容がわかりやすく展示され、
マスコットキャラクターのぬいぐるみや等身大パネルなどが彩りを添え
ていました。
フリーペーパー、同人誌、CD-R、バッジ、ステッカーなどが配布され、
参加者の方々が笑顔で受け取る様子も見られました。
私もいくつかのブースでお話を伺いましたが、突っ込んだ質問にも快く
応じてくださり、とても楽しくOSSの最新事情を知ることができました。
■ハンズオン
▼千歳科学技術大学 深町研究室 深町 賢一 氏・TAさんたち
「インフラエンジニア虎の穴」
千歳科学技術大学・深町研究室のみなさんが中心となり、UNIXサーバー
のインフラ構築を体験するという内容のハンズオンが行われました。
VPS(仮想専用サーバー)のようなサービスが普及し、一般ユーザーが
1からサーバーを構築する機会は減っています。ただ、一方でVPSのよう
なサービスの裏には、以前よりも高度なインフラを作り上げているエン
ジニアさんたちがいます。その裏舞台の入り口を実際に手を動かしなが
ら体験できるため、興味はあるけれど触ったことのない方にとって格好
のセミナーとなっていました。
入門者向けということで、セミナー概要には「壊してもいい機材を手配
するので安心して壊してください」という一文があり、講師側の配慮に
感心させられました。
内容としては、OSのインストールから始まって、WebサーバーとDBMSを
インストールし、CGIアプリケーションを動作させるところまでが目標と
なっていました。
GUIでOSをインストールした経験のある方は多いと思いますが、今回は
GUIは使わずにすべてCUIで実施したため、苦戦している姿も見受けられ
ましたが、その都度、講師陣が丁寧にサポートしていました。
途中、講師側のftpサーバーが繋がらなくなるという場面があり、
トラブルシューティングまで体験できるという特典付きでした。
また、ハンズオンの片隅ではWindows8.1のインストールデモが
行われており、手元の作業とのギャップを楽しめました。
■セミナー
今年も盛り沢山のセミナーがありました。
残念ながら全てのセミナーをレポートすることはできませんが、
どのセミナーも興味深いものでした。
ここでは一部をご紹介します。
▼羽鳥 健太郎氏・本島 靖氏・ 川人 隆央氏・橋本 明彦氏
「公共機関がOSSを導入するということ」
このセミナーは2枠分の時間が用意されており、その中で4名の方がそれ
ぞれの関り方について話してくださる形式でした。残念ながら橋本さん
の発表は時間の関係で挨拶のみになってしまいましたがその他の方の発
表はどれも興味深いものでした。
FixMyStreet Japan開発兼代表 川人さんの発表は、市民は税金を払って
公共機関からただサービスを受けるだけではなく、もっと積極的に市民
から公共機関へ情報を提供し、公共機関もその情報を利用することで、
お互いに大きなメリットがある。
そのための橋渡しとしてITを利用するというお話でした。札幌市内で
実際にあった例をあげられていて、公共施設の破損を報告したところ
数日で修復されたというのはとても驚きました。
会津若松市 本島さんの発表はなぜ公共機関でOSSを利用しようと考えたの
か。メリット、デメリット、導入にあたってのコツ、実際に導入してみて
どう変わったかというお話でした。
OSSを導入するにあたり、公共機関ではOSSの安定的な供給を望んでいる。
OSSはもっぱらコミュニティで運用されており、公共機関でもコミュニティ
を支援することでお互いにいい関係が築けるのではないか。
実際に会津若松市では職員が1名コミュニティ活動に入っているという
お話が印象的でした。
Open Knowledge Foundation Japan 羽鳥さんの発表は、
公共機関が持っているデータのオープン化のお話でした。
オープンデータとは、二次利用可能なデータのことであり、
公開しているだけのデータはオープンデータとは呼べないこと、
オープンデータには5つの段階があり、1つずつクリアできるよう
進めていること、オープンデータのライセンスについてお話いた
だきました。
「オープンデータが利用しにくい形式で解析が大変だった場合、
どうフィードバックしたらいいでしょう?」という質問に
「データを利用して、皆が見えるところに置こう!そして利用
していることをアピールしよう」という回答をなされていたのが
印象深かったです。
▼KOZOSプロジェクト 坂井 弘亮 氏
「アセンブラ短歌 〜アセンブラで短歌を書いてみよう〜」
SECCONのコンテストで行われる予定のアセンブラ短歌を体験する
というランチョンセミナーです。
アセンブラ短歌とは、五・七・五・七・七の三十一バイトから成る
機械語コードでプログラムを書いてみるという近未来の文化的趣味です。
単なるショート・コーディングの技術を競うものではなく、芸術性や味
わい深さを大切にしているとのことで、文化的にはプログラムよりも短
歌に近いと感じました。
アセンブラ短歌を初めて体験する私にとっては新鮮な驚きに満ちていた
のですが、会場は新しい短歌が紹介される度に大いに盛り上がっていま
した。参加者が韻を踏んでいる箇所を見つけて発言する場面もあり、と
てもよい雰囲気のセミナーでした。
▼LOCAL インフラ部 小岩 秀和 氏(一般社団法人LOCAL 理事)
「僕達の自由、これからの自由」
LOCAL インフラ部の小岩さんによる発表です。
毎年、色々なテーマで発表されている小岩さんですが、
今年は「自由」というテーマでの発表でした。
図書館の検閲やアプリストアの審査を例として、
自由に選択できないことに対する考えを話されました。
また、GNUプロジェクトの創始者であるストールマンの言葉を引用しなが
ら、フリーソフトウェアの考え方について話されました。去年は「笑い」
をテーマに発表されており、一転して真面目な話題でしたが、
「こうじゃなかった」「去年と違う」という声は全くと言っていいほど
聞かれず、会場の皆さんが自分達の「自由」について真剣に考えている
様子でした。
▼LOCAL 安全部 竹迫 良範 氏・園田 道夫 氏・松田 和樹 氏
「SECCON(セキュリティコンテスト)札幌大会のご紹介」
SECCONとは、SECurity CONtestの略で、最近テレビなどで話題となって
います。今年も、全国各地でいろいろな種類の大会が開かれています。
セキュリティ技術を競う大会は昔から行われており、最初は普通のOSの
脆弱性を見つける大会だったようですが、最近はそう簡単に脆弱性は見
つからないので、いろいろなルールが作られているようです。
プレゼント付きのセキュリティ○×クイズが行われたり、バイナリかる
たや目grepの様子を見ることができたりと、充実した内容でした。特に
目grepの紹介では、テキストは何色、改行コードは何色、模様で拡張子
がわかるなど、ある意味グラフィカルなノウハウが解説されており、と
ても盛り上がっていました。
■北海道独自企画
北海道独自の企画として、
「展示ブースツアー」「一部のセミナーのUstream中継」「北海道で輝く人たち」
によるセミナー発表が行われました。
▼展示ブースツアー
昨年、一昨年に続き、今年も展示ブースツアーを実施しました。
ガイド役のスタッフと一緒にいろいろなブースを見て回り、出展者と楽
しそうに交流していました。参加者同士で交流を深め合う場面も見られ
ました。
▼Ustream 中継
昨年に引き続き、今年も複数のセミナーで Ustream 中継を行いました。
会場に来られない方も、中継を見て楽しまれている様子がTwitterで伺え
ました。
▼【北海道企画】北海道で輝く人々 2013秋
本セッションでは、北海道内で活躍されている5名の方々による発表が
行われました。
札幌だけではなく、釧路、江別、函館、小樽で、エンジニアとして活動
している方から、中学校に通いながらプロコンに参加している方まで、
様々な活躍をされている皆さんのお話をきくことができました。
▼MTDDC Meetup 北海道実行委員会委員長 西山 泰史 氏
「Movable Type の今とこれから 〜最新版MT6とMTOS、
ユーザーグループのこれから〜」
西山さんは、札幌と小樽を中心にwebディレクターとして仕事をされて
います。最近は Movable Type のコミュニティに参加されることが多く、
Movable Type カンファレンスの企画などもされています。本セッション
では Movable Type のユーザコミュニティについてお話くださいました。
MTCafe は Movable Type ユーザがだれでも楽しく気軽に参加できる、
情報交換を目的とした集まりです。北海道では今年の3月9日に1回目が
開催されました。活動内容は、お茶会や飲み会などということでした。
技術系ユーザコミュニティで集まるというと勉強会を思い浮かべますが、
懇親をしながらの情報交換もとても楽しそうですね。
10月5日には MTDDC Meetup HOKKAIDO も開催されるようです。
▼Ohotech, 北見工業大学情報処理技術研究会 西原 翔太 氏
「北見で蠢くOhotechとSyoriken 〜僅か300km向こうの話〜」
西原さんは、北見工業大学電気電子工学科で脳波の研究をされていて、
普段はサークルでパソコンをさわっているとのことです。
北見のITコミュニティ Ohotech で勉強会の開催をされています。
Ohotech は「札幌の勉強会ブームを北見でも根付かせたい」という気持
ちのもと立ちあげられ、現在は学生4人、社会人2人の計6人で運営されて
います。普段の勉強会「並盛り」「特盛り」に加え、最近ではイベント
LDD’12 の運営もされていました。
所属している大学のサークル Syoriken では、ゲーム制作やweb制作、電
子工作など、メンバーの興味ある分野ならなんでもやってみるというお
もしろいサークルで、そこでもプログラムを書いてものづくりをされて
います。
Ohotech では学生と社会人の橋渡し、情報の分野と関わりがない人にも
参加してもらうことなどを目標に活動していらっしゃり、Syoriken では
なんと、小学校出張授業も行われているということで、北見でのITの盛
り上がりにとても興味をそそられました。
最後に「とびだせ道央のみなさん」と題して、今まで Ohotech の「特盛
り」にいらっしゃった方を紹介されていました。まだまだ参加者、発表
者を募集されているとのことですので、もし北見で行われている活動に
興味を持たれた方は、観光がてら参加してみましょう!
▼公立はこだて未来大学 杉谷 弥月 氏
「Rails Girls Sapporo のふりかえり」
杉谷さんは、現在学部4年の大学生です。現在はエンジニアではありませ
んが、来年から就職してエンジニアになるということで「卵です」と自
己紹介されていました。
8月9日、10日に RailsGirls Sapporo があり、杉谷さんはそのイベントの
Organizer (主催者) をされていました。RailsGirls は、プログラミング
未経験の女性に Ruby on Rails を使ってプログラミングを楽しんでもらう
イベントです。日本では他に東京と京都で開催されており、札幌でもぜひ
開催したいと昨年から計画をされていました。
今回、プログラミング未経験の参加者の女性と話したことで、日々の
ちょっとした悩みに目を向けること、物をつくりたい気持ちなど、プロ
グラムに対する初心を思い出したといいます。「人に教えるのは教える
側にも勉強になります」と、会場の方にも教える側にたってみることを
おすすめされていました。
大学でビブリオバトル部を立ち上げ、ビブリオバトル普及委員もされて
いる杉谷さん、後半はビブリオバトルを紹介されていました。ビブリオ
バトルは各個人がおすすめの本を持ち寄り、5分で本の紹介を行い、最後
に「読みたくなったもの」投票でチャンプ本を決めます。5分という時間
は意外と長く、しどろもどろになる、それがおもしろいといいます。
ビブリオバトルをやって良いことは「とにかく面白い本に遭遇する」こ
と。普段自分が興味を持たない本でも、熱く語ってもらうとなんだか読
みたくなってしまう。なので自分とは違う分野の人たちとやるほうが面
白い。そう熱く語る杉谷さんの話をきいて、ビブリオバトルがやりたく
なった方も多かったのではないでしょうか。
▼釧路在住の中学生、seccamp’12参加者 米内 貴志 氏
「うえをむく」
米内さんは釧路市立中学に通う中学3年生、現在は受験生です。
米内さんにとって「うえをむく」というのは「すごい技術者と会う」と
いうこと。すごい人と会うためには、セキュリティ・キャンプ、情報オ
リンピック、プロコン、OSCなどの、すごい人や魅力的な人が来る場所に
足を運ぶと良いとお話されていました。
実際に会いに行くと交通費もかかるのに、オンラインでやりとりできる
人になぜ「会う」必要があるのか?米内さんは、会うことによってすご
い人が「ホントに実在する」ことを実感できる、それによって「上の現
実味を感じることができる」とお話していました。
これは実際に、すごい人と出会い、接してみないと出てこない感覚では
ないでしょうか。良い出会いをたくさんしているというのが伝わってき
ました。
「交通費が高いのではないか」と思う方に向け、コンテストの中には
交通費や宿泊費などを支給してもらえるものもある、本がもらえたり、
観光だってできると、最初に挙げたコンテストに参加するという方法
をおすすめされていました。
今後、新しい技術を生み出す技術者になりたい。地元の釧路OSSを盛り
上げたい、楽しんで技術の分野と関わりたいし、知識を還元したい。
それから、まず高校に落ちないように頑張りたい。とおっしゃっていました。
応援しております!
▼ナオキ 氏
「コミュニティ運営について私が感じたこと」
ナオキさんは札幌で CodeJP、CLR/H、北海道情報セキュリティ勉強会と
いったコミュニティの代表をされており、札幌での勉強会開催に尽力さ
れています。今回は、コミュニティを継続させていくためにはどうした
ら良いか、複数のコミュニティを運営するには、という観点でコミュニ
ティ運営についてお話されていました。
スタッフも参加者も楽しめる環境づくりが大事
複数コミュニティを運営するにあたって大事なこととして、「スタッフ
が楽しめる場所を作ること」「コミュニティ毎の色を出すこと」が挙
がっていました。コミュニティが異なればスタッフも異なる、スタッフ
がコミュニティの色であるとして、ナオキさんが運営されているそれぞ
れのコミュニティのスタッフ、勉強会の特色を楽しい写真を交えて紹介
していただきました。
これからコミュニティ運営に携わりたい方、コミュニティを立ち上げて
みたい方にはとても参考になる内容だったのではないでしょうか。参加
者の視点でも、いろいろなコミュニティに参加してみたいと感じられる
発表でした。
■ライトニングトーク
司会、ドラ娘の自己紹介でひとしきり笑ったあとの盛り上った
雰囲気の中、6名の方へ5分の制限時間で思いのたけをぶつけて
いただきました。
インフラ、ハードウェア、セキュリティ、バイナリ、正規表現などの
真面目な題材を、発表者が楽しんで扱っていることが伝わってくる
内容で、会場からは何度も笑いがおきていました。
■懇親会
約170名が参加した懇親会では、
北海道名物のジンギスカンが食べ放題でした。
美味しい料理と気のおけない仲間に囲まれ、LTで盛り上がるところも
あれば、じっくり親睦を深めているところもあり、参加者の皆さんは
楽しい雰囲気のなかで思い思いに懇親できたようです。
また、公式二次会も開かれており、
70名ほどの参加者が長いOSCを楽しんでいました。
■おわりに
今年は例年とは異なる会場での開催となりました。
今までとは違う部分に戸惑うことがあったかもしれませんが
講演者・出展者・参加者の皆さんのご協力により無事に開催、運営する
ことができました。感謝いたします。
当日の様子やUstreamへのリンクは後援の一般社団法人LOCALの
開催報告ページにまとまっています。
OSC2013 Hokkaidoのことをもっと知りたい方はぜひご覧ください。