「オープンソース」を使ってみよう (第6回:OpenStreetMap編)

1 Comment
このエントリーをはてなブックマークに追加

———————————-
OpenStreetMap Japan
田口 貴久
———————————-

● OpenStreetMap とは

OpenStreetMap(以下OSM)とは、誰でも自由に利用できる地理情報データを
集積した2004年にイギリスで発足したプロジェクトです。

普段みなさんが利用されている一般的な地図サイトの地理データは著作権の対象
として保護されており、無断で複製することはできません。また、情報を付け加
えたり、たとえ地図に間違いがあったとしても修正もできません。

OSMはWikiベースの百科事典 Wikipediaのように自由な利用・編集が可能であ
り、このような問題を解決します。現在、国外ではOSMへの関心は高く、ヨー
ロッパを中心に市販の地図と遜色ないレベルに発展してる地域があります。

▼OSMの地図(イギリス:ロンドン)クリックして拡大表示

日本では2008年3月にプロジェクトが立ち上がり、すぐに本格化しました。当初
は東京都心ですら空白地帯が多い状態でしたが、GPSやGIS(地理情報システム)
への関心の高まりとともにユーザー数が増え、わずか3年で大きく成長いたしま
した。

● 地図の編集方法

それでは、OSMへの基本的な編集方法を簡単にご紹介いたします。

1. 情報の収集

地図を編集するために、まずは情報を集めなければなりません。日本国内では今
現在以下の方法が容易に利用することができます。

GPSロガーを利用する
GPSロガーを持ち歩き緯度・経度情報を集めます。OSMではもっとも基本的な
手法です。GPSロガーがなければ、スマートフォンを利用してGPSログを集める
こともできます。集めたGPSログはGPX形式で保存し、OSMのサーバーへアップ
ロードするか、後述するJOSM等の編集ソフトへ取り込みます。
▼色々な種類がある、GPSロガー(クリックして拡大表示)

衛星写真を利用する
衛星写真を利用することで、GPSロガーでは採取できない場所の情報を得ること
ができます。現在のところ、MicrosoftがOSMへ提供しているBingの衛星写真が解
像度が高く容易に利用できます。ただし、地域によってはズームアップした場合
ズレがある場所がありますので注意が必要です。



2. データの編集

地図の編集は、代表的なものとして以下の2つの方法があります。
(編集ソフトは下記以外にもありますし、APIを利用することも可能です。)

Potlatchでの編集
OSMのサイトへアクセスしていただき、上部の「編集」のリンクをクリック
していただくとPotlatchを開くことができます。Adobe Flashを利用しているた
め、プラグインをインストールされているブラウザであれば起動することができ
ます。

Potlatchは現在バージョン1と2の2つのバージョンを利用することができます。
デフォルトではバージョン1が起動されますが、バージョンを選ぶには、「編
集」のリンクへマウスカーソルを持っていきしばらくするとメニューが現れます
ので起動したいバージョンを選択してください。バージョン2ではデフォルトで
Bingの衛星写真を利用することができます。

JOSMでの編集
Potlatchはオンラインで手軽に編集できるよう設計されていますが、特定エリア
での長時間の編集や大量のデータを一度に編集したい場合は、OSM専用の編集ソ
フトJOSMを利用することをお勧めします。JOSMはJAVAベースで作られており、
OSを問わず起動することができます。JOSMはこちらからダウンロードできます。

編集方法としては、集めたGPSログの軌跡または衛星写真をなぞりながら、Way
(道路・川などの線)やPOI(地物などを示す点)を入力していきます。Wayは
クリックしながら描き、POIはダブルクリックすることで入力していきます。

入力したWayやPOIにはタグをつけることでさまざまな情報を付与することができ
ます。例えば道路であれば、以下のようなタグがあります。
(あくまで一例です。詳細についてはこちらをご覧ください。)

・highway: 種別(高速道路/国道/都道府県道など)
・ref: 路線番号
・name: 路線名
・lines: 車線数
・width: 道幅
・oneway: 一方通行
・tunnel: トンネル
・bridge: 橋
・Maxspeed: 制限速度

▼オンラインで編集可能な「potlatch バージョン2」(クリックして拡大表示)

入力されたデータはサーバーへ保存するとすぐに処理され、負荷状況にもよりま
すが早ければ10分程度で地図がレンダリングされます。

● OpenStreetMapの活用事例

OSMは上記で説明したようなリアルタイムな地理情報を提供できる特徴を生か
し、災害時の情報提供ツールとしての実績があります。2010年1月ハイチ地震の
ときには衛星写真が無償提供され、世界中のマッパーが協力し道路、河川、崩壊
地、避難地のマッピングを行いました。その結果、一瞬にして詳細な地図ができ
あがり、救助活動・復興支援に非常に大きな手助けとなりました。

3月11日におきた東北関東大震災でもその実績を生かし、震災直後からOSMユー
ザーの有志が中心になり、被災地のマッピングや復興支援サイト sinsai.info
構築・運営など国内・海外を問わず多くの人々が協力し整備しております。

▼OSMが活用されている「sinsai.info」(クリックして拡大表示)

OSMは誰でも手軽にオープンソースへ参加でき、地図を通じて社会へ大きく貢献
できるプロジェクトだと考えております。ご興味のある方は是非ご参加ください。

● OpenStreetMap Japanについて

OpenStreetMap Japan は、日本での OpenStreetMapの普及と発展を目指し、意見
交換・サイト/ツールの翻訳・イベント参加・マッピングパーティの開催等を行っ
ております。

また、一般社団法人オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン
(OSMFJ)は、日本のOSMコミュニティ活動を支援する団体であり、OSMの活動趣旨
に賛同し、日本における自由な地図情報の発展とそれに伴う技術発展を促進しま
す。

一般社団法人オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン(OSMFJ)
http://www.osmf.jp/

———————————-
OpenStreetMap Japan
田口 貴久
———————————-

One Comment (+add yours?)