「オープンソース」を使ってみよう(第3回:KNOPPIX/Math Project 編)

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KNOPPIX/Math Project
Chief Editor 濱田 龍義

* KNOPPIX/Mathって何?

ペンギンアイコン

KNOPPIX/Math は Linux ディストリビューションの一種です.
KNOPPIXはドイツのKlaus Knopperさんが始めたプロジェクトで,CD/DVD から
起動するタイプのLinuxとして有名です.2002年以降,産業技術総合研究所の
須崎有康さんが日本語版の開発,改良を行っています.
この功績により,須崎さんは2010年度日本OSS貢献者賞を受賞しています.

KNOPPIX/Mathは須崎さんと協力して,KNOPPIX日本語版にオープンソースの
数学ソフトウェアを収録して配り始めたのが始まりです.
開発当初はTeX環境と数種の数学ソフトウェアだけだったのですが,最新版では
100近くのオープンソース数学ソフトウェアを収録しています.
現在では,国内の数学者をはじめとする有志によってプロジェクトが運営され
ており,ドキュメントやビデオアーカイブの充実を図っています.
2008年度からはJST CREST「数学と諸分野の協同によるブレークスルーの探索」
の,大阪大学日比孝之氏のチーム『現代の産業社会とグレブナー基底の調和』
などから支援を受けています.

日本語版だけでなく,英語版も公開しており,これまでに,韓国,スペイン,
アメリカ,オーストリアなどで紹介を行っています.
4年に一度,世界中の数学者が一同に会する国際数学者会議(ICM)というイベ
ントがあります.今年はインドのハイデラバードでICM2010が行われました.
ICM2010でKNOPPIX/Mathの紹介を行ったところ,大きな反響をいただきました.
展示・配布を通して,大勢の方と話しましたが,インドの数学関係者の間では,
オープンソースソフトウェアが定着しつつあるようです.
現地の様子については,12/11に発売の数学セミナーという雑誌の1月号に
「ICM報告記」として掲載される予定です.

* どういう人が使うと便利なのか

数式処理システムや数値計算ツール,可視化ツール等,様々な数学ソフトウェア
が収録されています.
インストールせずに,これらのツールが手軽に使えます.

▼KNOPPIX/Math デスクトップラウンチャー(クリックして画像を拡大)
KNOPPIX/Math デスクトップラウンチャー

数式が混ざった文章を記述するためには,LaTeX環境を収録しており,Emacs
を用いても良いですし,LaTeXのためのフロントエンドであるKileも利用可能
です.

かなり専門性の高いソフトウェアから,中学生や高校生が気軽に使えるような
ソフトウェアまで,各種揃えていますが,例えば GeoGebra などは,どなたでも,
楽しめるのではないでしょうか?
GeoGebraはJavaで開発された動的幾何学ソフトウェアの一種です.
動的幾何学ソフトウェアとは,コンパスや定規でできる操作をソフトウェア上
で実現しているソフトウェアですが,GeoGebraの場合には,さらに軌跡描画
やグラフ描画,表計算モードも備えており,動的数学ソフトウェアとも呼ばれ
ています.
GeoGebra はオーストリアのMarkus Hohenwarterによって始められたプロジェ
クトです.
現在,Markus はフロリダ大西洋大学で開発を進めていますが,GeoGebraの利
用者は世界中で数十万人以上いると言われています.
日本では,北海道教育大学の和地輝仁氏が作成しているGeoGebra日本が参考に
なりますのでご参照ください.
(GeoGebra日本)→ http://sites.google.com/site/geogebrajp/

他にもMaximaや3D-XplorMath,Octave, R, Sage など,楽しい数学ソフトウェア
が各種収録されています.
KNOPPIX/Math自身にこういったソフトウェアの日本語ドキュメントも収録さ
れていますので,ぜひ,ご利用ください.

▼GeoGebra と 3D-XplorMath(クリックして画像を拡大)
GeoGebra と 3D-XplorMath

* 利用方法(ダウンロードなど)

現在,福岡大学,神戸大学,筑波大学などに設置されているFTPサーバから,
DVDのISOイメージをダウンロードできます.
(ダウンロード)→ http://www.knoppix-math.org/

ISOイメージファイルをダウンロードしたら,そのファイルをDVD-Rに焼いて
ください.
このDVD-RをPCに入れて再起動することで,利用可能です.
また,ISOイメージをVMware Player 等の仮想マシン上で用いることもできます.
神戸大学ではVmware Toolsをインストール済みの仮想マシンイメージを配付
していますので,そちらを利用するのも便利です.
(仮想マシンイメージダウンロード)→ http://www.math.kobe-u.ac.jp/vmkm/vmkm-ja.html

* KNOPPIX/Math Projectの取り組み

現在,KNOPPIX/Math Projectでは,可能な限り,各地のOSCに参加して,紹介
を行っています.
12月11日に福岡工業大学で行われるOSC2010福岡にも参加予定です.

また,年に2度,日本数学会の開催に合わせて,「数学ソフトウェアとフリー
ドキュメント」というワークショップを開催しており,講演の様子はビデオ
アーカイブとして公開されています.
興味のある方は,ぜひご覧ください.
(ビデオアーカイブ)→ http://www.math.kobe-u.ac.jp/cm/

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